2025.08.19Uncategorized
カルティエといえば、世界の王侯貴族を魅了してきた名門ジュエラー。その中でも腕時計「タンク」は、100年以上の歴史を誇るアイコンモデルです。今回ご紹介するのは、経年劣化により真っ黒に変色し、メッキも剥がれてしまった「マストタンク」をお預かりし、丁寧な修理と再仕上げを行った事例です。
カルティエは1847年、ルイ=フランソワ・カルティエがパリで創業しました。彼の工房は評判を呼び、やがてフランス宮廷御用達の宝飾商へと成長します。さらに3代目ルイ・カルティエの時代には、宝飾品だけでなく時計製造にも力を入れ、独自のデザイン性をもった腕時計を次々と発表しました。カルティエは「宝飾の美」と「時計の実用性」を融合させ、芸術性をもったタイムピースの先駆者となったのです。
カルティエを代表する「タンク」は1917年に誕生しました。ルイ・カルティエが第一次世界大戦中に目にした戦車のフォルムから着想を得たといわれています。戦車を上から見たシルエットをモチーフに、ケースの縦枠をキャタピラ、文字盤部分を操縦席に見立てたデザインは、当時の腕時計としては非常に革新的でした。
直線的でモダンなデザインは、流行に左右されることなく現代まで継承され続けています。芸術作品のような佇まいを持ちながら、日常生活に溶け込む実用性も兼ね備えた、まさにカルティエを象徴する時計といえるでしょう。
お預かりしたのは、シルバー925をベースにゴールドメッキを施した「マストタンク」。長年のご使用で表面は真っ黒に変色し、さらにメッキが剥がれて下地の銀が露出していました。
このままでは本来の美しさが失われてしまいますので、以下の工程で修理を行いました。
変色取りと研磨
時計を各パーツに分解し、ケース・裏蓋・ネジ類を丁寧に変色取り修理をして、銀特有の黒ずみを取り除きます。その後にケースと裏蓋を研磨をして、細かい傷も目立たなくし、地金の滑らかさを取り戻します。裏蓋はその後にヘアライン加工をします。
厚みのある再メッキ
通常の日本のメッキ工場の再メッキは0.8ミクロン程度と言われていますが、今回は耐久性と深みのある輝きを考慮し、5ミクロンの厚メッキを施しました。これにより、輝きが長持ちし、より高級感のある仕上がりとなります。
修理前は黒ずみと剥がれが目立っていたケースも、再仕上げにより美しいゴールドの光沢を取り戻しました。シャープなフォルムが際立ち、カルティエタンク本来の気品ある佇まいが甦っています。裏蓋の深い凹みは刻印が消えないレベルに抑えてあります。お客様からも「新品のようになった」と大変お喜びいただけました。
また今回はガラス交換もさせていただきました。
◇変色取り・再メッキ修理33,000円 ◇ガラス交換8,800円
カルティエのマストタンクは、単なる時計ではなく、100年以上続くタンクの歴史を受け継ぐ特別な一本です。だからこそ、長く愛用する中で傷や変色が生じても、適切な修理を行えば再び輝きを取り戻すことができます。
大切な思い出の詰まった時計をこれからも末永くご愛用いただけるよう、当店では専門的な研磨や厚メッキ加工でサポートいたします。もしお手持ちのカルティエが変色やメッキ剥がれでお困りでしたら、ぜひ一度ご相談ください。