2021.08.16WATCH REPAIR
カルティエ マストコリゼの表面を金色にする為に使われているヴェルメイユという技法は18金の薄膜を時計の表面に張り付ける技法です。(厚メッキもヴェルメイユと呼びます)
今から60年ほど前までのスイスメーカーやSEIKO、CITIZENなどの古い腕時計の表面には18金の薄膜を貼った「金張り」という技法が使われていました。
これらの「金張り」をしてある古い時計の裏面の刻印には「K18GF」という刻印が入っています。実はこの刻印で金張りなのか金メッキなのかを確認することが出来ます。
◇K18または18K・・・・・本物の18金
◇K18GPまたは18KGP・・・Gold Platedの略 金メッキ
◇K18GFまたは18KGF・・・Gold Filledの略 金張り
※日本製品ではKが先にあり、外国製品ではKが後にあります。これで日本製か外国製かも知ることが出来ます。
K18だけの刻印なら本物の18金、その後に「P」が付くとメッキ、「F」が付くと金張りと覚えると良いでしょう。ただ、最近生産されている腕時計ではGFの金張りのものはほとんどありません。
さて、この写真が今回のカルティエ マストコリゼの修理依頼品です。このカルティエ マストコリゼは本体がシルバー925で出来ており、その上にヴェルメイユという技法で金張りが施されています。
また同じ時代に生産されている四角いデザインのカルティエ マストタンクも同じシルバー925にヴェルメイユが施されているのですが、どちらも変色が激しく、大切に保管しておくとこの写真のように褐色から黒色に変色してしまいます。
こちらの写真が裏面の写真です。真ん中に購入時からの透明のシールが貼ってあります。この境界をみてみるとシールの中は変色が少なく、その周りが黒く変色しています。このことから分かるのは空気に触れた所が変色しているという事です。
今回のカルティエの腕時計はシルバー925(銀)の素材の上に薄膜の18金をヴェルメイユという技法で貼ってありますが、本体のシルバー925(銀)の銀イオンが金の薄膜を通って表面に出て、空気中の硫化水素と反応してこのように真っ黒になるようです。
こちらの写真が時計を分解して、黒く変色した部品を並べたところです。本体ケース、裏蓋、裏蓋を留める小さなネジです。
裏蓋のシールを剥がして、これらのパーツを特殊な薬液に浸し、ブラシで丁寧に変色を取り除きます。
この写真が変色を取り除いた後の写真ですが、当店の15,400円のコースでは変色取り作業の後にもうひと手間かけて時計を綺麗に仕上げています。
本体ケースは変色取りをした後に艶出しのバフ研磨を行います。この艶出しのバフ研磨により表面の細かい擦り傷が消えて、表面にも艶が出てピカピカになります。
裏蓋もにも軽くヘアラインを入れます。この作業により細かい擦り傷が消えて裏蓋も綺麗になります。
こちらが時計を組み立てた後の写真です。変色が取れただけでなく、表面にあった細かい擦り傷が消えて表面がピカピカに輝いているのが分かります。しかし、よくみると9時の横に小さな傷が残っています。この傷は凹みが深い打ち傷なので艶出しのバフ研磨だけでは除去できずに残っています。もしこの傷も取り除いて新品のようにしたい場合は「研磨・再メッキ」の修理コースをお選びいただくと取り除くことが出来ます。
こちらの写真が時計を組み立てた後の裏面です。こちらも軽くヘアラインを入れて細かい擦り傷を取り除いてありますのでとても綺麗です。シールは元々貼ってあったシールを貼り直してあります。
この写真はお預かり時の写真と修理完成時の写真を並べて比較したものです。変色が取れただけではなく、時計表面の艶が戻っている点にも注目してください。
今回のカルティエ【Cartier】の修理料金
作業内容 : 変色取り、本体のバフ研磨、ヘアライン修理
修理費用 : 15,400円(税込)(往復の送料無料)
修理ご希望の方にはお近くのコンビニから当店に無料(着払い)で送ることができる「らくらく送付キット」をお送りいたします。【LINE】または【お問い合せフォーム】から「郵便番号、ご住所、お名前、お電話番号」をお知らせください。またLINEやメールでお時計の写真をお送り頂くと詳しいご説明が返信できますのでお気軽にご相談ください。
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