2023.10.22WATCH REPAIR
カルティエマストタンクは、戦車を上から見た時のデザインに着想を得てデザインされ、縦枠を無限軌道に、ケースを操縦席に見立てた、明確なグラフィックによって定義されています。いまはロシアがウクライナに侵攻しており、戦車というものは決して良いイメージではありませんが、このカルティエタンクに関してはいつ見ても美しい良いデザインだと感心させられます。
これがカルティエマストタンクを上から見た写真です。ルイ・カルティエの強い思いによって1917年に生まれたこの時計は平行に伸びる2本の縦枠が、無駄のないラインとなり、特徴的なデザインのタンクウォッチに仕上がっています。
このカルティエマストタンクですが本体や裏蓋などの素材がシルバー925で出来ています。このシルバーの材質の上にヴェルメイユという金の厚いメッキが施されています。
シルバーはご存じのように放置しておくと黒く変色してしまいます。しかし、このカルティエマストタンクは表面に厚いメッキがしてあるので変色しない・・・と思われがちです。
しかし残念ながらタンクを含むカルティエのヴェルメイユシリーズは黒く変色してしまいます。それはシルバーの素材から発生する銀のイオンが金の膜を通り抜けて、空気中の硫化水素と結合して、金の表面で黒い硫化銀になってしまうからです。
全国にはこのカルティエのヴェルメイユシリーズが黒く変色して、とてもがっかりしている方が多いようです。しかしご安心ください。当店の技術で見違えるように綺麗に蘇らせることが可能です。
これがお客様から修理ご依頼で送られてきたカルティエマストタンクです。確かに黒く変色していて、腕にはめるのは・・・ためらうかもしれません。拡大してみると変色の汚さがよく分かります。
裏面も同じように変色が進んで、とても汚く見えてしまいます。
またこのタンクはよく観察すると四隅にメッキの剥がれがあることが分かります。上の写真の赤丸の部分を見ると、真っ黒になっている箇所があります。これは本体のシルバーがむき出しになっているので真っ黒な硫化銀に変化してしまっているのです。
カルティエマストタンクのメッキの剥がれは必ずと言っていいほどこの四隅の部分から始まります。
金メッキが剥がれたタンクは再メッキをする必要があります。そのためには研磨でメッキを剥がすのですが、この際にまるで鏡のような鏡面に仕上げる必要があります。
この鏡面の仕上げにすることで、メッキの仕上がりが格段に美しくなります。当店では手抜きをせずにピカピカの鏡面仕上げをいつも目指しています。
またメッキについてですが、日本のメッキ工場で行われるメッキの厚みは0.8ミクロン以下と言われています。当店のある福井市の隣の鯖江市は眼鏡フレームの生産量97%を誇る眼鏡の街です。この鯖江にはメッキ工場が何社もありますが、その社長さん達のお話を伺うと、メッキの厚みはやはり0.8ミクロン以下がほとんどのようです。
ただ、腕時計は身に着けていると、あちこちに擦れるので0.8ミクロンではメッキがすぐに取れてしまいます。当店では全国のメッキ工場に問い合わせをして、現在は5ミクロンの厚いメッキができるようになっています。
これが当店で鏡面仕上げをしてから、厚い5ミクロンメッキをしたものです。品格があるとても美しいカルティエマストタンクになっているのがお分かりになるかと思います。
裏蓋は変色取りをして、鏡面部は研磨で鏡面仕上げをし、平面のヘアライン仕上げがされている箇所は新しいヘアラインを入れ直して厚い5ミクロンメッキを施します。裏蓋も手抜きがなく美しい仕上がりとなっています。
カルティエマストタンは本体サイドに4本の小さなネジがあり、裏蓋にも4本の小さなネジを使っています。これらのネジは時計本体の変色と同じく黒く変色しています。
当店ではこれらのネジ1本1本も変色も綺麗に取り去っています。
2024年2月より価格改定があり以下の価格となります。
◇変色取り 15,400円
◇変色取りと研磨、5ミクロンメッキ 33,000円
ネット検索で当店に修理をご依頼いただいたお客様からのメッセージです。
「カイドージュエリーさんにネットで出会えたことがラッキーで、本当に良かったという気持ちでいっぱいです。
カルティエの腕時計の金属部分が黒くなり、他店では修理が難しいと断られ、殆ど諦めていました。ネットで検索をしたところカイドージュエリーさんのHPが目にとまりました。
LINEで何度も修理内容や料金の説明をして頂き、こんなに親切で素敵なお店に出会ったのは初めてでした。本当にありがとうございました。これからも大切に使わせていただきます。」