2025.05.30WATCH REPAIR
カルティエの「タンク」ウォッチは、戦車を上から見た構図にインスピレーションを得て誕生しました。縦枠はキャタピラ(無限軌道)を、ケースは操縦席を想起させるようにデザインされており、その明快なフォルムは唯一無二の存在感を放ちます。中でも「マストタンク」は、洗練されたデザインと職人技が融合したモデルとして、今なお多くの人々に愛されています。
しかし、このカルティエタンクは長年の使用により、変色やメッキの剥がれなどが起きてしまうこともあります。今回は、当店で承ったカルティエ マストタンクの修理事例をご紹介しながら、どのようにして本来の美しさを取り戻すのかをご紹介します。
ご依頼いただいたカルティエ マストタンクは、経年による黒ずみが目立ち、さらにメッキの剥がれも確認されました。当店では、専用の薬剤と高度な技術を用いて丁寧に変色を除去し、研磨で磨き上げて鏡面仕上げを実施。最終工程として、5ミクロン厚のメッキを施しました。その結果、時計は見違えるような輝きを取り戻し、お客様からは「まるで新品のようだ」と大変ご満足いただきました。
日本国内の一般的なメッキ処理では、その厚みが0.8ミクロン以下であることがほとんどです。一方、当店では美しさだけでなく、長期間の耐久性も重視し、5ミクロンという厚めのメッキを標準としています。これにより、日常使いでも劣化しにくく、美しい状態を長く保つことが可能になります。
時計本体がどれだけ美しく仕上がっていても、ネジ1本の変色が全体の印象を損なうことがあります。当店では、特殊な技術で小さなネジ1本1本にまで目を配り、丁寧に変色を除去して均一な美しさを追求しています。
裏蓋の美しさも、時計全体の印象に大きく影響します。変色を取り除いた後、繊細なヘアライン仕上げを施すことで、裏側からも洗練された印象を演出。細部まで妥協しない仕上がりが、お客様の満足度を高めています。
修理を終えた時計をお渡しした際、お客様から「こんなに綺麗になるとは思わなかった」とのお礼のメッセージをいただきました。その感動の声は、私たちが日々丁寧な仕事を積み重ねている意味を再確認させてくれるものでした。
カルティエ マストタンクは、その洗練されたデザインに加え、持ち主の人生や思い出が刻まれた特別な時計です。私たちは、その大切な一本を蘇らせるお手伝いをしています。もし、お手元の時計の変色や劣化が気になっている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。心を込めて、美しさを取り戻すお手伝いをいたします。