2025.08.12WATCH REPAIR
今回お預かりしたのは、カルティエの名作ウォッチ「マストコリゼ」。長年のご愛用でラグ部分の金メッキが剥がれ、地金のシルバーが見えてしまっていました。とくにストラップの付け根付近は摩耗が激しく、光沢が失われてしまっている状態です。
1847年にパリで創業したカルティエは、王侯貴族からも愛される世界屈指のジュエラーであり、高級時計メーカーとしても確固たる地位を築いています。伝統的な美意識と革新的なデザインを融合させ、時を超えて愛される数々のコレクションを発表してきました。
「コリゼ(Colisée)」とはフランス語で「コロッセオ(円形闘技場)」を意味します。その名の通り、丸みを帯びたケースフォルムと、ストラップを支える独特のラグ構造が特徴です。ローマ建築を想起させるこのデザインは、エレガンスと存在感を兼ね備え、1980〜90年代のカルティエを代表するモデルのひとつとして人気を博しました。
また「マスト(Must)」シリーズは1970年代後半、カルティエの魅力をより多くの人に届けるために誕生。高品質なヴェルメイユ(シルバー925に金メッキ)ケースを採用し、ラグジュアリーさと実用性を両立させています。
お預かりした時計は、ケースの金色がところどころ薄くなり、ラグ部分は銀色の地金が露出していました。長年の摩擦や汗、皮脂がメッキを徐々に侵食し、くすみや小キズも目立つ状態です。
分解・洗浄
ムーブメントをケースから取り出し、すべてのパーツを分解。表面の変色や汚れを丁寧に洗浄します。
下地処理(研磨)
メッキの仕上がりを左右するのは下地作り。小キズを取り除き、滑らかな表面になるよう丁寧に研磨します。
再メッキ加工
シルバー925の地金に厚みのある5ミクロンの18金メッキを施します。輝きと耐久性を高めるため、均一な厚みを確保しながら加工を進めます。
組み立て・最終仕上げ
ムーブメントを組み戻し、ストラップを装着。最終的に外観と動作をチェックしてお渡しとなります。
再メッキ後は、ラグやケース全体が新品同様の輝きを取り戻しました。摩耗して白く見えていた部分も均一なゴールドに仕上がり、ブランド本来の高級感が蘇っています。お客様にも「まるで新しい時計を手にしたみたい」と大変喜んでいただけました。
まとめ
カルティエ マストコリゼは、単なる時を刻む道具ではなく、デザインと歴史が詰まった特別な存在です。メッキの剥がれや傷みも、適切な修理を施すことで再び美しい姿を取り戻せます。思い出の詰まった時計こそ、長く大切に使い続けたいものですね。