2025.08.25WATCH REPAIR
カルティエというブランド名を聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか?
おそらく、豪華絢爛なハイジュエリーや、洗練されたデザインの腕時計ではないでしょうか。その中でも、時計史に燦然と輝く名作として知られるのが「タンク」です。今回は、長年の時を経て真っ黒に変色し、メッキも剥がれてしまったヴィンテージのカルティエマストタンクを、専門の修理で蘇らせた事例をご紹介します。
なぜ、あなたの愛するタンクは変色してしまったのか? そして、その輝きを取り戻すための秘策とは?
カルティエの深い歴史とタンク誕生の物語を紐解きながら、その魅力に迫ります。
カルティエの歴史は、1847年、ルイ=フランソワ・カルティエがパリのモントルゲイユ通り29番地にある師のアトリエを引き継いだことから始まります。当初は、王侯貴族やセレブリティを顧客に持つ、高級ジュエリーブランドとして名を馳せていました。
そんなカルティエが、時計製造に本格的に乗り出すきっかけとなったのが、ルイ・カルティエと飛行家アルベルト・サントス=デュモンの友情です。1904年、サントス=デュモンは、飛行中に簡単に時間を確認できる腕時計の製作をルイに依頼しました。当時はまだ懐中時計が主流の時代。しかし、ルイは彼の要望に応え、腕に装着できる革新的な時計「サントス」を生み出しました。
そして、第一次世界大戦中の1917年、ルイ・カルティエは戦場で活躍するフランス軍の戦車「ルノーFT-17」からインスピレーションを受け、その武骨で力強いデザインを時計へと昇華させます。
長方形のケース、2本の垂直なベゼル、そしてケースを横切るように配置されたブレスレット
このユニークなデザインは、まさに戦車のキャタピラそのもの。 こうして、時計史に残る傑作「タンク」が誕生したのです。
今回修理のご依頼をいただいたのは、ヴィンテージのカルティエマストタンク。特に、マストシリーズは、当時カルティエの高級腕時計をより多くの人々に広めるために誕生したモデルで、その特徴は、**ヴェルメイユ(銀のケースに金メッキを施したもの)**という素材にあります。
しかし、このヴェルメイユという素材、長年の使用や保管状況によって、メッキが剥がれてしまったり、下地の銀が酸化して黒ずんでしまうことがあります。
せっかくの美しい時計も、この黒ずみやメッキの剥がれによって、本来の輝きを失ってしまいます。
諦めかけていたその輝きを、専門の修理で取り戻すことができます。
今回は、真っ黒に変色してメッキも剥がれてしまったタンクに対し、以下の修理を行いました。
これらの修理によって、まるで時を巻き戻したかのように、カルティエマストタンクは本来の輝きを取り戻しました。変色してくすんでいたケースは、美しいゴールドの光沢を放ち、剥がれていたメッキも完璧に修復されました。
いかがでしたでしょうか。
カルティエの歴史とタンク誕生の物語を知ることで、あなたのタンクは単なる時計ではなく、時を超えて受け継がれる「歴史の証人」として、より一層愛おしい存在になったのではないでしょうか。
変色やメッキ剥がれは、諦める必要はありません。
正しい知識と確かな技術を持つ専門家による修理で、あなたの愛するヴィンテージウォッチは、再び輝きを取り戻し、未来へと時を刻み続けます。
もし、ご自宅に眠っているヴィンテージのカルティエマストタンクがあるなら、一度修理を検討してみてはいかがでしょうか。時を超えて受け継がれる輝きを、再びあなたの腕に。