2025.09.12WATCH REPAIR
愛用されているクオーツのカルティエ マストタンクのメッキが剥がれて銅色になってしまったとご相談をいただきました。せっかくの美しい時計も、変色してしまうと使うのが億劫になってしまいますよね。今回は、そんなマストタンクの再メッキ修理をご紹介します。
時計のメッキ剥がれは、空気中の硫化水素や汗・皮脂など様々な要因で起こります。特に夏場や、日常的に着用されている時計は、どうしてもメッキが劣化しやすい傾向にあります。
今回のマストタンクは、長年の使用によりメッキが剥がれ、銅色に変色していました。この状態から元の輝きを取り戻すために、以下のような工程で再メッキ修理を行いました。
マストタンクの再メッキ修理を通じて、カルティエというブランドの魅力にも改めて触れてみましょう。
カルティエは、1847年にルイ=フランソワ・カルティエがパリで創業した高級宝飾店です。**「王の宝石商、宝石商の王」**と称されるほど、世界中の王侯貴族に愛されてきました。
時計の分野でも、カルティエは革新的な歴史を築いてきました。1904年には、飛行家サントス=デュモンのために、世界で初めての男性用腕時計**「サントス」**を製作。懐中時計が主流だった時代に、実用的な腕時計という新たなスタイルを確立しました。
そして、今回修理したマストタンクは、1970年代に誕生しました。当時、高級時計の市場はクォーツショックの影響で低迷していました。そんな中、カルティエは**「高価なものだけがマストではない」**という哲学を掲げ、比較的手頃な価格の「マスト」シリーズを発表しました。
タンクのアイコニックなデザインはそのままに、ゴールドメッキを施したモデルは、多くの人々にカルティエの時計を身につける喜びを与えました。マストシリーズは、ブランドの新たな顧客層を開拓し、カルティエを現代まで続くトップブランドへと押し上げる大きな原動力となったのです。
今回の再メッキ修理によって、この歴史あるマストタンクは、再び手元で美しい輝きを放ち始めました。古いメッキを剥がし、丁寧に研磨し、新たな輝きを与える作業は、カルティエの時計が持つ**「時を超えて愛され続ける価値」**を象徴しているように感じます。
愛用の時計がくすんでしまった、メッキが剥がれてしまったという方は、ぜひ一度、再メッキ修理を検討してみてはいかがでしょうか。もう一度、輝きを取り戻した愛機とともに、新たな時間を刻み始めることができます。