2025.09.27WATCH REPAIR
いつもカイドージュエリーの時計修理ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
今回ご紹介するのは、カルティエ(Cartier)のアイコンウォッチの一つである**「マスト タンク(Must Tank)」**の変色取り修理事例です。
長年の時を経て、ケースが茶色く変色してしまったマスト タンクが、まるで時を巻き戻したかのように輝きを取り戻しました。その驚きのビフォーアフターをご覧ください。
画像をご覧いただくと、ケース全体、特に裏蓋やラグ(ベルト取り付け部)周辺が茶色〜黒く変色しているのがお分かりいただけます。
これは、ベースとなっているシルバーが、空気中の硫化水素や硫黄成分などと反応して硫化銀に変化した結果です。ヴェルメイユは金メッキが施されていますが、長年のご使用や保管状況、特に汗や湿気の影響でメッキの微細な隙間からシルバーが変色してしまいます。
しかし、この時計は擦り傷が少なく、メッキの大きな剥がれも見受けられない非常にコンディションの良い個体でした。
当社の熟練の職人が丁寧に時間をかけて変色を取り除くクリーニングを行いました。
驚くほど美しく、本来のゴールドの輝きが蘇りました!
コンディションの良さが功を奏し、ヴェルメイユ特有の深みのあるゴールドカラーが際立ち、見違えるほど綺麗になりました。
このような変色は、ご自身で市販の研磨剤などで磨くと、かえってメッキが剥がれてしまうリスクがあります。ヴェルメイユ素材の変色やメンテナンスは、専門知識と技術を持つ私たちカイドージュエリーにお任せください。
なぜ、マスト タンクはこれほどまでに世代を超えて愛され続けるのでしょうか。
マスト タンクのベースとなった**「タンク」コレクションの誕生は、1917年。第一次世界大戦中に、創業者ルイ・カルティエが、上空から見たルノー製の戦車**の無限軌道(キャタピラー)のフォルムからインスピレーションを得てデザインした、という逸話が有名です。
長方形のケースと、ストラップ(ベルト)と一体化した垂直なラグ(ヴァーティカル・バー)は、それまでの丸形が主流だった時計デザインに革命をもたらしました。
そして、今回のお時計のように文字盤に「must de Cartier」と記されているのが、1970年代後半に登場した**「マスト ドゥ カルティエ(Les Must de Cartier)」**ラインです。
当時のカルティエは、一部の富裕層向けの超高級ブランドでしたが、クォーツショックなどで市場が変化する中、「誰もが持つべき(must)」をコンセプトに、比較的手の届きやすい価格帯のコレクションとしてマストラインを発表しました。
特にヴェルメイユ素材を採用したマスト タンクは、当時としては革新的な価格設定で、世界的な大ヒットを記録。カルティエを広く一般層に知らしめ、現代に続く人気を確立した立役者と言えるでしょう。
ヴェルメイユ(金メッキ)は、経年変化で変色することがありますが、適切なお手入れで美しさを保てます。
変色や汚れが気になる場合は、無理せず専門の時計修理店にご相談ください。
カイドージュエリーでは、今回のような**「変色取り・バフ研磨」から、メッキの剥がれがある場合の「再メッキ仕上げ」**まで、カルティエ ヴェルメイユの修理を多数承っております。
長年ご愛用された大切なマスト タンクを、次世代へ受け継ぐためにも、オーバーホールやメンテナンスはお気軽にご相談ください。
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