2025.09.29WATCH REPAIR
お預かりしたカルティエ マストタンクは、過去に一度再メッキが施されていたようです。長年の使用によりそのメッキが薄くなり、ケースの地金であるシルバー925(銀無垢)が透けて全体的に銀色に変色している状態でした。
マストタンクのケースは、本来、銀無垢の上に厚い金メッキを施す**「ヴェルメイユ」**という伝統技法で作られています。これは、高価な無垢の金を使うことなく、カルティエのエレガンスをより多くの人々に届けるための工夫でした。しかし、メッキは永遠ではないため、摩擦や汗などによって経年劣化し、地金が露出してしまうのが、ヴィンテージウォッチが抱える宿命です。
この状態を放置すると、酸化や腐食が進む恐れがあるため、本来の美しさと耐久性を復活させるための修理が必要でした。
カイドージュエリーでは、このカルティエ マストタンクの輝きを永く保つため、以下の工程で徹底的な修理を行いました。
当社の技術により、メッキが薄れ銀色になっていたケースは、カルティエの発表当時を思わせる、均一で深みのある黄金の輝きを取り戻しました。
まるで時を巻き戻したかのように完璧に蘇ったその姿は、ヴィンテージウォッチの持つエレガンスを再認識させてくれます。
この「マストタンク」が属する**「マスト ドゥ カルティエ(Must de Cartier)」**ラインには、ブランドの歴史における重要なストーリーが隠されています。
マストタンクの原型である「タンク」が誕生したのは1917年。創業者ルイ・カルティエが、第一次世界大戦で活躍した**戦車(タンク)**の上空から見たフォルムにインスピレーションを受けてデザインしたと言われています。直線と曲線の完璧な調和、そしてラグとケースが一体化した究極にミニマルなデザインは、誕生から100年以上経った今もなお、時計デザインの金字塔として君臨し続けています。
1970年代、カルティエは伝統的な高級路線を保ちつつ、より幅広い層にブランドの魅力を広げる必要に迫られました。そこで登場したのが「マスト ドゥ カルティエ」ラインです。
「Must(マスト)」という言葉には、**「絶対にもたなければならないもの」**という意味が込められています。手の届きやすい価格帯でありながら、カルティエのエレガンスとデザイン性を妥協なく詰め込んだこのコレクションは、「手の届くラグジュアリー」として世界中で大ヒットし、カルティエを危機から救い、現代のヴィンテージブームへと繋がる道を切り開いたのです。
カルティエの「ヴェルメイユ」製品のように、メッキが生命線となるヴィンテージウォッチは、適切な時期に適切な処理を施すことで、その価値と美しさを維持できます。
カイドージュエリーでは、時計の素材や特性を熟知した職人が、今回のマストタンクのように、徹底的な研磨、下地処理、そして耐久性の高い5ミクロン厚メッキを施し、お客様の大切な時計の「時を超えた輝き」を復活させます。
カルティエ マストタンクをはじめとする、ヴィンテージウォッチの再メッキ修理やオーバーホールは、ぜひカイドージュエリーにご相談ください。
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