2025.10.27WATCH REPAIR
ご覧ください!この見事な復活劇を!
今回お預かりしたのは、カルティエのアイコンウォッチのひとつである「マスト ドゥ カルティエ ロンド(Must de Cartier Ronde)」です。
長い年月を経て、ケース全体が茶色く変色し、見るも無残な状態になっていました。しかし、当社の「変色取り修理」で、まるで時を巻き戻したかのように輝きを取り戻しました。

ベゼル(文字盤の周り)の変色がひどく、虹色から茶色に変質し、本来の金色の輝きは失われていました。また裏蓋にも広範囲の変色がありました。この変色の原因は、主に本体がシルバーで出来ていることと、表面の金メッキ層(ヴェルメイユ)の酸化や、湿気・汗などによる化学反応によるものです。


ご覧のように当店の高度な技術による変色取り・洗浄・仕上げによって、ご覧の通り、くすみが消え、艶やかな本来のゴールドカラーがよみがえりました!
この「マスト ドゥ カルティエ」ラインは、カルティエの歴史において非常に重要な役割を果たしました。
1970年代初頭、スイスの時計産業全体がクォーツショックの波にさらされ、高級宝飾ブランドであるカルティエも例外ではありませんでした。そこで、当時の経営陣の一人であったロバート・ホック氏とアラン=ドミニク・ペラン氏が、カルティエを救うための大胆な戦略を打ち出します。
それが、1973年に誕生したサブライン「マスト ドゥ カルティエ(Must de Cartier)」です。
この「Must de Cartier」はフランス語で「カルティエの絶対的な必需品(誰もが持っていなければならないもの)」を意味します。
従来のカルティエは、最高級の貴金属(金やプラチナ)を用いた、一部の富裕層にしか手の届かない超高級品でした。しかし、この「マスト」ラインでは、ケース素材に「ヴェルメイユ(Vermeil)」を採用することで、コストダウンを実現します。
「マスト ドゥ カルティエ」は、この戦略的な価格設定により、それまでカルティエを持つことができなかった新しい顧客層(特に若い世代)の手に届くようになり、世界的な大ヒットを記録。カルティエというブランドを、現代の誰もが知る巨大ラグジュアリーブランドへと押し上げた、**「カルティエ再生の立役者」**とも言えるコレクションなのです。
今回修理した「ロンド」も、そんな歴史的な背景を持つマストラインの一つ。この逸話を知ると、修理によって輝きを取り戻した時計に、さらに愛着がわいてくるのではないでしょうか。
カルティエのヴェルメイユ素材は、経年や保管環境によって今回のように変色しやすいという性質があります。
「昔買ったカルティエの時計が、しまっていたら茶色や虹色になっていた…」という方は、ぜひ一度、カイドーにご相談ください。高度な技術を持つ職人が、大切な時計の輝きをよみがえらせます。
修理のご相談は、以下のページからお気軽にお問い合わせください。