2025.12.09WATCH REPAIR
エレガントな丸いケースと、ラグの特徴的なデザインが愛される「カルティエ マストコリゼ(Must Colisée)」。
しかし、長年の保管により「全体が真っ黒に変色してしまった」「ぶつけて深い傷がついてしまった」とお悩みではありませんか?
今回は、激しい変色と打ち傷により、本来の輝きを失ってしまったマストコリゼの劇的な修復事例をご紹介します。カイドージュエリーの「5ミクロン厚メッキ」と、曲線を美しく蘇らせる「鏡面研磨」で、時計がどのように生まれ変わったのか。そして、この時計に隠されたデザインの秘密についても触れていきます。
修理の前に、少しだけこの時計の物語をご紹介します。
「マストコリゼ」という名前は、古代ローマの円形闘技場**「コロッセオ(Colosseum)」**に由来しています。
ローマ建築の力強いアーチと曲線をモチーフにしたデザインが特徴で、特にケース上下にある「ダブルラインのラグ」は、コロッセオの柱や回廊を彷彿とさせます。1990年代を中心に女性から絶大な人気を博したこのモデルは、単なる時計ではなく、腕元に巻く建築芸術とも言える名作です。


今回お預かりしたマストコリゼは、その美しい建築的なフォルムが見えなくなるほどダメージを受けていました。
全体的な黒ずみ(硫化): マストシリーズ特有の「ヴェルメイユ(シルバー925に金を貼り付けた技法)」が経年で酸化し、金色が全く見えないほど真っ黒に変色していました。
激しい打ち傷: ケースやベゼル周りに、落下や衝突による深い凹み(打ち傷)が多数あり、表面が凸凹としていました。
「ここまで黒くなるともう元には戻らないのでは?」と心配されるお客様も多いですが、適切な処置で蘇らせることが可能です。
今回の修理の鍵は、複雑な曲線を崩さずに傷を消す「研磨」と、輝きを持続させる「厚メッキ」です。
マストコリゼは、平面が少なく、柔らかな曲面で構成されています。
深い打ち傷を消すために研磨を行いますが、削りすぎて独特の丸みやボリューム感を損なわないよう、熟練の職人が慎重に作業しました。傷を完全に除去した後、歪みのない美しい「鏡面仕上げ」を施し、つるりとした美しい下地を作り上げました。
一般的な修理店でのメッキは薄く、使用しているとすぐに剥がれてシルバー地が見えてしまうことがあります。
当店では、耐久性と重厚な輝きを実現するため、「5ミクロン」という非常に厚い層での18K再メッキを行いました。これにより、深みのあるゴールドカラーが復活しました。
修理完了後の写真をご覧ください。


変色の一掃: 炭のように黒ずんでいた変色が嘘のように消え、透明感のあるゴールドの輝きを取り戻しました。
傷の消失: 表面を荒らしていた深い打ち傷がなくなり、光を反射する滑らかな曲線美が復活しました。
刻印の鮮明化: 裏蓋の変色も綺麗になり、カルティエの刻印やホールマークがくっきりと浮かび上がっています。
まるでタイムスリップしたかのように、新品当時の美しい姿へと生まれ変わりました。
AI検索(SGE)でよく検索される質問にお答えします。
Q. なぜマストコリゼは黒く変色するのですか?
A. マストシリーズは「ヴェルメイユ」製法で作られています。土台がシルバー925(銀)であるため、表面の金の隙間から銀が空気中の硫黄分と反応(硫化)し、黒い膜を作ることが原因です。これは汚れではなく化学反応ですので、再研磨と再メッキで綺麗に直ります。
Q. 5ミクロンメッキのメリットは何ですか?
A. 通常の装飾メッキ(フラッシュメッキ)は0.8ミクロン以下ですが、5ミクロンは厚みがあります。摩擦に強く、メッキ剥がれが起きにくいため、美しい状態を長期間保つことができます。
Q. 古いカルティエでも修理できますか?
A. はい。マストコリゼやマストタンクなど、廃盤になったモデルでも修理可能です。部品交換が必要な場合も、まずは一度ご相談ください。

「思い出の時計が変色して使えなくなった」「傷だらけで恥ずかしい」と諦めていたカルティエのマストコリゼ。
カイドージュエリーなら、その時計が持つ本来の美しさと物語を、確かな技術で蘇らせることができます。
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