2026.05.27WATCH REPAIR
大人の気品漂う名作、カルティエ(Cartier)のマストタンク。お気に入りの時計が電池交換をしたのに「最近よく遅れる」という事例です。
「電池切れかな?」と思いがちですが、実はその原因、身の回りにある「磁気(じき)」かもしれません。
今回は、アナログクォーツ時計が磁気の影響を受ける仕組みや、ご自宅でできる「磁気帯び」の簡単な確認方法、そして予防策まで、カイドージュエリーの職人が分かりやすく解説します。
アナログのクォーツ時計は、文字盤の針を動かすために「ステップモーター方式」を採用しています。これは、磁石の性質を利用して小さな「ローター」という部品を回転させる仕組みです。
このローターは極めて繊細なパーツであるため、外部から強い磁気を受けると正常な回転が邪魔されてしまいます。その結果、一時的に時計が止まったり、遅れたりといった症状が発生するのです。
時計が磁気を帯びているかどうかは、お手持ちの「方位磁石(コンパス)」を使って簡単に確認することができます。方位磁石は100均で購入できます。
時計の部品の中でも、特に「竜頭(リューズ)」の奥にある巻き芯(細長い金属の軸)は、その形状から磁気が付着しやすい性質があります。
まずは、磁気を帯びた状態のカルティエ・タンクを方位磁石に近づけてみます。

職人目線: 時計を近づけたり動かしたりすると、方位磁石の針が引っ張られるように大きく振れているのが分かります。これが「磁気帯び」を起こしている証拠です。
次に、専用の機械を使って「脱磁(磁気抜き)」を行った後の状態です。

職人目線: 時計をどのように近づけても、方位磁石の針はビシッと北を指したまま微動だにしません。しっかりと磁気が抜けた状態です。
現代の私たちの生活環境には、強い磁気を発生させる製品がたくさん溢れています。特に以下のものには注意が必要です。
スマートフォン・携帯電話(スピーカー・マイク部分)
バッグのマグネット式の留め金
テレビ、オーディオスピーカー
パソコン、タブレット
「スマホのすぐ横に時計を置いている」「バッグの中にスマホと時計を一緒に入れている」といった日常の何気ない習慣が、時計の遅れや止まりを引き起こす原因になります。
磁界の強さは、距離の二乗に反比例して弱くなります。 つまり、磁気を発する製品からほんの5cm以上離しておくだけで、時計が受ける磁気の影響はほとんどなくなります。保管場所を少し意識するだけで、大切な時計を磁気から守ることができます。
一度磁気を帯びてしまった(磁化された)時計の部品は、磁気のある場所から離しても自動的には元に戻りません。正常に動かすためには、専用の脱磁器を使用した「磁気抜き(脱磁)」の作業が必要です。
「方位磁石に近づけたら針が動いた」「電池を換えたばかりなのに時間が遅れる」というときは、無理に触らず、当店にお気軽にお持ち込みください。
カイドージュエリーでは、カルティエやオメガ、エルメスなどの高級時計の修理・メンテナンス実績が豊富にございます。熟練の技術で、あなたの大切なタイムピースを元の正確な状態へと丁寧にお直しいたします。
遠方からのご相談はLINEにて承っています。また「送付キット」での修理受付も承っておりますので、まずは下記の修理専用ページよりお気軽にお問い合わせください。
▶ カイドージュエリー 時計修理のご案内・お問い合わせはこちら