2026.06.07WATCH REPAIR
カイドージュエリーのブログへようこそ。
今回は、ヴィンテージウォッチとして今なお絶大な人気を誇る「カルティエ・マストタンク(手巻きモデル)」のトータルメンテナンス事例をご紹介します。
長年大切に使い込まれた時計には、メッキの剥がれだけでなく、ぶつけてしまった際の「凹み(打痕)」や内部の油切れなど、複数の悩みが重なってしまうものです。 今回は、内部のオーバーホール(分解掃除)から外装の大規模なリフレッシュまで、当店の技術を尽くして新品同様に蘇らせたプロセスをお届けいたします。
カルティエのマストタンクは、シルバー925の地金にゴールドを厚く重ねる「ヴェルメイユ」技法で作られていますが、経年とともにマストシリーズ特有のダメージや、日常のキズが蓄積しやすい繊細な時計でもあります。
今回お預かりした手巻きモデルは、外装に大きなダメージが見られるとともに、内部の機械も長年の油切れによってメンテナンスが必要な状態でした。そのため、「内部のオーバーホール(33,000円)」と「研磨・5ミクロン再メッキ(38,500円)」をセットで承りました。
お預かりした際の状態は、ヴィンテージタンクによく見られるお悩みがすべて現れているコンディションでした。
本体ケース正面: 写真の白丸で囲んである通り、タンク特有の症状である「四隅のメッキ剥がれ」が起きており、下地のシルバーが完全に露出して黒ずんでいます。さらに、ケース上部やサイドには、ぶつけてしまったことによる多くの打痕(凹みキズ)が深く刻まれていました。

裏蓋の状態: 裏蓋は全体に広範囲な変色が進んでおり、本来のゴールドの輝きが失われ、茶褐色に濁ってしまっている状態でした。

これほど深い打痕や変色があると、「もう綺麗には戻らないのでは……」と諦めてしまいそうになりますが、職人の精密な研磨技術と特別なメッキ加工を施すことで、本来の姿へ巻き戻すことが可能です。
本時計の美しさと機能性を取り戻すため、以下の工程を丁寧に行いました。
まずは手巻きのデリケートな内部機械をすべて分解し、古い油の洗浄、新しい注油、そして精度の調整を徹底的に行います。外側だけでなく、時計としての命である「正確な時を刻む機能」をしっかりと蘇らせます。
ケースに刻まれた多くの打痕(凹み)やメッキの剥離による段差を、職人の手仕事で慎重に削り・磨き上げていきます。マストタンクの命である「シャープな直線のエッジ」を絶対に丸めないよう、息をのむような繊細さで美しい平滑な面を作り出します。
裏蓋などには、カルティエオリジナルの風合いを忠実に再現するため、細かな直線状の模様を入れる「ヘアライン仕上げ」を施し、上品で落ち着いた質感へと整えます。
下地を完全に整えた後、本体ケースと裏蓋の双方に、一般的な修理店の数倍の厚みとなる「5ミクロン」の18金極厚メッキを贅沢に施します。これにより、本物の18金が持つ深みのある黄金色が宿り、今後の摩耗にも非常に強い仕上がりになります。
四隅のシルバーの露出や、ケースを覆っていた無数の打痕(凹み)が見事に消え去りました! 5ミクロンの18金メッキを纏ったケースは、直線と曲線のメリハリが美しく、まるで当時のブティックに並んでいた新品のような、気品あふれる極上の鏡面(ミラーフィニッシュ)を取り戻しています。

どんよりと茶褐色に変色していた裏蓋も、完璧にリフレッシュされました。 丁寧なヘアライン仕上げと再メッキにより、カルティエのロゴマークや「925」「ARGENT」といった伝統的な刻印がハッキリとクリアに引き立ち、気高く美しいゴールドの質感が見事に蘇っています。
今回の手巻きマストタンクのトータルメンテナンス費用は以下の通りです。
オーバーホール(分解掃除): 33,000円(税込)
研磨 + 5ミクロン再メッキ(ケース・裏蓋): 38,500円(税込)
修理合計: 71,500円(税込)
手巻きのヴィンテージタンクは、定期的なオーバーホールと適切な外装ケアを行うことで、この先何十年も、そして次の世代へと受け継いでいくことができる一生ものの財産です。
「キズや凹みがひどい」「動かなくなって変色している」と諦めてしまう前に、ぜひ一度カイドージュエリーへご相談ください。福井県の店頭へのお持ち込みはもちろん、全国対応の「配送修理」も承っております。
▼カルティエ マストタンクの再メッキ・時計修理の詳細はこちら https://kaido-co.jp/watch