ENICAR(エニカ)というブランドをご存じでしょうか?
土星のロゴが印象的なこのスイス時計ブランドは、1854年にスイス・レングナウで創設されました。その歴史は非常に古く、1930年代にはヨーロッパ各国の鉄道用時計として採用され、精度と耐久性が高く評価されていました。さらに第二次大戦中にはアメリカ空軍に軍用時計を供給し、戦後の1951年には日本にも正式に輸入され、一時代を築いたブランドです。
中でも代表的な「シェルパ」シリーズは、過酷な環境でも正確に動き続ける堅牢性で知られています。1956年にはエベレスト遠征のスイス隊用公式時計に、さらに1959年からの南極越冬隊にも採用され、冒険家たちにとって信頼の証とも言える存在でした。
そんな歴史あるENICARのアンティーク腕時計の再メッキ修理をご依頼いただきました。今回お預かりしたのは、長年愛用されていたと思われる一本で、バンド部分には摩耗や真鍮の腐食が見られ、全体的にかなり傷んでいる状態でした。
お客様のご希望は、腐食部分の補修に加え、シルバー色のメッキを18金メッキに変更し、金色の華やかな外観に仕上げること。時計の素材は真鍮で、もともとはロジウムメッキが施されていたようです。そのため、まず全体を丁寧に研磨し、腐食や傷を可能な限り取り除いてから、18金の再メッキを施すことで、美しく蘇らせることができます。
また、竜頭(リューズ)は白色で目立っていたため、こちらも18金による差しメッキを行い、全体の統一感を持たせました。
今回の修理費用は以下の通りです:
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本体・裏蓋・バンドの研磨および18金再メッキ:38,500円(税込)
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竜頭の差しメッキ:6,600円(税込)
修理後の仕上がりには、お客様にも大変ご満足いただきました。金色の光沢が自然で、まるで最初からそうであったかのような美しさ。再メッキ前にしっかりと研磨を施しているため、まるで新品のような輝きを取り戻しています。
ENICARのような歴史ある腕時計は、たとえ外装が傷んでいても、丁寧に手を加えることでその魅力を再び引き出すことができます。もし、ご自宅に眠っているアンティーク時計がありましたら、ぜひ一度ご相談ください。思い出とともに、時を刻み続ける一本に生まれ変わるかもしれません。