2024.06.08WATCH REPAIR
古いエルメスの時計の再メッキのご依頼をいただきました。
ここでちょっと考察・・・
最近は古い時計をヴィンテージウォッチという言い方が当たり前になってきました。私はなぜかこの中古の時計の全てが「ヴィンテージ」と呼ばれることに少し抵抗を感じています。
Googleで「ヴィンテージ」を検索すると・・・
Q ヴィンテージとはどういう意味ですか?
A ヴィンテージ(ビンテージ)とは、「古くて価値が高いもの」「年代もの」の意味。 もともとはワインの製造年を表す言葉だが、価値が高く古い衣料品を指すファッション用語としても使われている。
ということだそうです。この説明を考えると、ただの古い衣料品はヴィンテージと呼ばず、価値が高いものだけをヴィンテージと呼ぶのだと思います。
最近の中古の時計を売り買いしている風潮は何でもがヴィンテージと呼んでいるようです。私個人の思いでは同じ型で数多く流通している中古の時計をヴィンテージと呼ぶのは間違っているのではないかと思います。
今回、再メッキでご相談いただいたエルメスの腕時計です。私はこれまであまり見たことのないエルメスです。私は中古販売業者ではありませんので価値は分かりません。しかし、これは珍しい時計かと思います。もしかしたら、このような時計ならヴィンテージと呼んでも良いのかもしれません。
今回は再メッキのご依頼ですが、今回のようにこれまで手掛けたことのない時計は基本的には修理を受けたくない・・・というのが本音です。
それは①研磨をし過ぎると時計の形やカーブが変わってしまう。②刻印が薄かったりすると、研磨で刻印が消えてしまう。③金属の素材によってはメッキがのらない場合がある。・・・などなどです。特に③の研磨でメッキを取ったのはいいが、メッキが出来ないとなると困ったことになります。
今回は強いご要望でしたので、もしかすると綺麗にならない場合もある・・・ということも了承していただいて、お引き受けしました。結果は写真のように研磨もメッキも上手くいきましたのでホッと安堵しました。
こちらが組みあがったエルメスです。文字盤の汚れは綺麗にするには限界があります。しかし修理前と比べると格段に綺麗になったと思います。
もう一つの考察ですが、
本来のヴィンテージと呼ばれるものは修理の加工をしてもヴィンテージと呼んでもいいのでしょうか?また、どこまでのメンテナンスが許されるのでしょうか?いつもこのことを考えています。
しかし、将来的にその時計を販売することを目的にしていなければ、綺麗な状態で自分の腕にはめて使っていられる方が良いのは当たり前ですよね!
自分ではヴィンテージだと思いながら汚い時計をしていても、周りの人にとっては「汚い時計をしているなぁ・・・」としか見ないですものね!(笑)