2025.06.02WATCH REPAIR
今回お預かりしたのは、今からおよそ40年前に販売されていたセイコーの「ソシエ」という腕時計です。この時計は、お客様のお母様が生前にご愛用されていたもので、大切な思い出の詰まった一本です。お母様が亡くなられてから時を経て、「もう一度この時計をきれいにして使いたい」とのご要望をいただき、修理を承りました。
修理内容は、オーバーホール(分解掃除)、外装の研磨、そして18金の再メッキ処理です。長い年月が経っているとはいえ、幸いなことにこれまで水分の侵入などはなく、内部の文字盤や針は非常に良好な状態を保っていました。ガラス部分には、経年劣化によって接着剤がわずかにはみ出していましたが、それ以外に大きなダメージは見られませんでした。
まずは内部機構のオーバーホールから開始しました。ムーブメントを分解し、丁寧に洗浄、注油、調整を行います。長年動いていなかったとは思えないほど、部品の状態がよく、しっかりとメンテナンスを施すことで本来の精度が戻りました。
外装は、ケースの細かい傷を丁寧に研磨し、仕上げに18金の再メッキを施しました。竜頭についても腐食していましたので再メッキを行いました。もともとのデザインを尊重しつつ、ツヤと輝きを取り戻したケースは、まるで新品のような美しさに生まれ変わりました。年月を経てもなお魅力を放つこの時計が、再び持ち主のもとで時を刻む準備が整いました。
また、お客様からは「修理後は金属のバンドを付けたい」とのご希望もありましたので、当店の在庫から、30~40年前のバンドの中からデザインの合うものをご提案させていただきました。実際に取り付けてみると、これが驚くほどぴったりで、時計との相性も抜群。まるで当時の姿がそのまま蘇ったような仕上がりとなりました。
修理が完了した「ソシエ」は、単なる腕時計という枠を超え、時を超えて受け継がれる「想いのかたち」としてお客様のもとへ帰っていきました。これからまた新たな時間を刻んでいくことでしょう。